江戸時代中頃の横浜。
天涯孤独の少女・フウは、「向日葵の匂いのする侍」の情報を求めて数多くのバイトをしていた。
そんなある日、ふとしたことで知り合った二人の男・ムゲンとジンを用心棒として、彼女は「向日葵の匂いのする侍」を探す旅に出ることを決意する。(wikiより抜粋)
異文化剣客活劇
江戸時代を舞台としながら、現代文化、特にヒップホップカルチャーを随所に使う演出が特徴。
言葉も現在流行の若者言葉(’04)が入り混じり、まさに時代劇とチャンプルーした世界観が見事。
背景や殺陣シーンも素晴らしく、時代劇好きな獄長にとってはたまらないアニメである。
ちなみに、OPはマングローブらしく斬新かつスタイリッシュ、EDはまだ勢いのあったころの「MINMI」。
緊張と緩和のリズム
この「サムライチャンプルー」という作品、深夜枠で、’04年5/19~9/22まで放送されたらしい。
全26話が制作されたが、フジテレビの編成の都合上、第17話で打ち切られたという(関西テレビでの放送も同様)。
後に、BSフジでは18話から26話を第2シーズンとして放送した。
真の理由は分からないが、これは制作やファンにとってはなかなかの仕打ちであろう。
ドラマなどにしても、人気がなくて打ち切りはよく聞くが「編成の都合上」はあんまりだ。
だがこのアニメは面白い。
典型的なロードムービーで主人公が3人、硬派と軟派の対照的な男性キャラに愛くるしいヒロインと、非常に解りやすい構図となっている。
さらにこのアニメ、特筆すべきは「緊張と緩和」の使い方である。
シリアスからコメディの回を巧みに使い、飽きさせない作りになっている。
「緩和」の部分は後の大作「銀魂」にさすがに及ばないが、チャンバラシーンは「銀魂」をも凌ぐ緊張感である。
時代劇ということも含めて、非ヲタでも恥ずかしくなくファンを公言できる、稀有な作品だと言えよう。
冒頭で引き込む魅力
シナリオの世界には起承転結の「起」の入り方、作品の冒頭には「撫で型」「張り手型」の2種類がある。
「撫で型」とは向田邦子作「阿修羅のごとく」に代表されるように、淡々としたシーンから入り、心地良く観客をストーリーに誘う入り方。
逆に「張り手型」はいきなりインパクトのあるシーンから初めて、観客の興味を一気に引くという方法。
ヤン・デ・ボン監督「スピード」などはその典型的な作品である。
どちらも一長一短の有名な手法。
そして、このアニメは完全な「張り手型」、開始12分で話に引き込まれる。
ちなみにアニメ史上最短は「アカギ」の6分(獄長調べ)。
昨今のTVアニメシリーズにおいて、「1話が終わって2話も見たい」と強烈に思わせることは重要だ。
実際この1話は何回でも見返せる。
この12分で、主要人物3人の境遇、性格、作品の世界観が完璧に分かる。
すぐに分かるのはヒロインはおきゃんでありながら艶があり、対照的な男性キャラはどちらも強く、金がない。
ヒップホップ風に時間軸と空間を表す演出もなんともハイカラだ(恐らく、当時)。
これだけ条件が揃えば、作品としてつまらなくなるはずがない。
優良作品の条件
このアニメ作品において、最も評価すべきはやはり「完結した」ということに尽きる。
「向日葵の匂いのする侍を探す旅」というオチの難しそうな初期設定も、無難にまとめていると思う。
向日葵も一応絡め、クライマックスシーンから旅の終わりの余韻とうまく完結している。
ロードムービーのオチがイマイチな作品が多い中、ここは評価すべき点でだろう。
よって認定。
これほどの作品を途中で打ち切ったフジテレビの罪は重い。
最後に、このアニメはパチンコ、パチスロ共にモチーフになっている。
近年、パチンコパチスロのタイアップは有名無名アニメ問わず、数多く存在するが、それによって一般知名度が上がるのは良い事だと思う。
パチンコ業界自体の存在については、視点がずれるのでここでのコメントは控える。
だが、このタイアップの版権料で制作会社が儲かり、次回作へ予算をかけられるのは悪いことじゃないんじゃないか。
画像:https://video.unext.jp/